殿堂入りのお皿たち その128【トラヤ の 葛きり】
世の中の食べ物は、大量生産、便利さの名の下に、ちょっと言いすぎかも知れないが、まがいものが氾濫している。
例えば、代表的なものが、この葛きり。
葛きりの美味しさは、デンプンのアルファ化に密接に関連しているので、本来、作り置きは困難なもの。
お米が炊きたてが一番美味しいように、葛きりも作りたてが一番美味しい。
その風味は、ほんの数分で大幅に減退してしまうほど繊細である。
従って、この世に存在する、パック詰め的な葛きりは、葛きりのようでいて、葛きりと呼ぶには少し問題がある。
この本物の葛きりを味わわずして、葛きりを嫌いな食べ物と判断してしまっているならば惜しいとしか言いようがない。
東京で、ちゃんとした葛きりを食べられるお店は、おそらく10軒くらいしかないが、代表的な一件を挙げておくと、トラヤの葛きりは美味しい。
もちろん一番に尊敬すべきは、大変な労力を払い、大量の根からほんのわずかのくず粉を精製している生産者さんであるが、それをちゃんと活かさなくてはもったいなすぎます。