殿堂入りのお皿たち

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コロナウイルスの見通し35  PCR検査の論点

依然としてPCR検査をやるべき、やるべきでないという論争が続いています。

この議論は、医者としての立場、政治家としての立場、患者としての立場の違いにより、不必要な混乱が生じていると思います。

答えは至ってシンプルだと思いますが、まずは、「一般市民に対するスクリーニングや漠然とした不安に応えるための検査は増やすべきでない」とする、医者としての立場、からの議論をベースに話を始めましょう。(以下の文章は文意を変えないように単純化してあります。)

「まずは、日本に新型コロナの患者さんがどれくらいいるのか考えてみましょう。・・・ここでは計算しやすくするために1000人に1人が感染状態であると仮定します。病気の人を正しく病気であると診断できる確率を「感度」、病気でない人を正しく病気でないと診断できる確率を「特異度」といいます。新型コロナのPCR検査の場合、感度は50~70%(ここでは70%で計算)、特異度は99%程度であると想定します。10万人の市民全員にPCR検査を実施したとしましょう。PCR検査の感度は70%ですから、100人の感染者のうち70人は陽性に出ます。一方、30人は陽性にはなりません。この人たちは感染しているのに検査結果は陰性なのです。しかし、9万9900人の感染していない人も全員が検査を受けています。PCR検査の特異度は99%ですから、このうち1%(つまり999人)は病気でないにも関わらず陽性と診断されてしまうということになります。10万人の検査を実施して、結果が陽性になるのは、実際に感染している100人のうちの70人と、感染していない9万9900人のうちの999人。合わせて1069人です。しかし、この中で実際に感染していたのは70人だけですよね。検査結果が陽性になった人のうち、わずか6.5%しか本当の感染者がいない、ということになります。」

https://www.yushoukai.org/blog/pcr?fbclid=IwAR26fQ5ygqtg2PqFw9w4xpBxZh3fT23YHwkVnYfhPeM_3IB16w4CaASY0x0

 

どう思われますでしょうか。医者個人の考え方としては、正しそうに見えます。

 

では、個人から見たときはどうでしょうか。個人から見れば、特異度は99%ですから十分に信頼できます。他の検査方法でも100%ということはなく、99%はかなり高い数字です。上の著者も「必要性の高い人には迅速に実施できる体制が必要」と言っていますので、

・「必要性の高い人には迅速に実施できる体制が必要」

・「一般市民に対するスクリーニングや漠然とした不安に応えるための検査は増やすべきでない」

は正しそうです。

でも、本当にそうでしょうか。

(ちゃんとした本当の)政治家からの立場から見てどうでしょうか?

上の議論では、スクリーニングの検査は増やすべきでない、としていますが、スクリーニングをしないと事実、全体像がつかめません。

確かに上の著者も述べているように、とりあえず、総死亡者数が有意に増えていないという統計があるので、おおまかには、コロナは現状、深刻ではないことを意味しています。しかし、第2波への予測などを考えるときに、全体像をつかんでおくことは極めて重要と思います。

ですので、結論としては、

・「必要性の高い人には迅速に実施できる体制が必要」

・「一般市民に対する漠然とした不安に応えるための検査は増やすべきでない」

・「PCRか抗原、抗体検査により全体像をつかむためのスクリーニングは必要」

かと思います。