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コロナウイルスの見通し19 専門家会議の状況分析・提言

新型コロナウイルス感染症対策専門家会議 「新型コロナウイルス感染症対策の状況分析・提言」(2020 年 5 月 1 日)が出された。

https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000627254.pdf

 

私が感じたことについて述べておく。

 

目新しいデータとしては、下右図の発症日が出された。

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一方、今後の見通しについては以下のように記述されている。

「今後の見通しについて (1)今後求められる対策の期間に関する見立て ○ 3 月 19 日の提言では、「短期的収束は考えにくく長期戦を覚悟する必要」があると したところである。早期診断から重症化予防までの治療法の確立に向けた明るい兆 しが見えつつあるが、諸外国の感染状況やそれに対する対応等も踏まえると、国内 における感染状況に応じて、持続的な対策が必要になることが見込まれる。」

おおよそ、予測されたとおりの内容であるが、5/1にも出されるはずであった東京都における抗体検査の結果が含まれていない。確かに、抗体を持っているからと言って再感染しないとは言い切れないものの、データとしては抗体保有率は有用なはずである。実際の感染力(実効再生産数)の推定や、集団免疫に対してどう望むか、などを考えるときには必須のデータのはずである。なぜ、今回の提言で、抗体検査の結果が触れられていないのかが謎である。検査機関との連携がない、または、資料を作るために間に合わなかったのかも知れないが。一応、以下のような記述がなされているので、近い将来、データは出てくるものと思われる。

「より確度の高い予測を行うためには、広範な抗体検査を早急に実施する必要 がある。」

PCR検査については、以下のように触れられている。

PCR 等検査数が諸外国と比べ限定的な中、感染者数が減少しているとなぜ判断 できるのかとの指摘がされている。これに関しては、医師が必要と判断した場合及び 濃厚接触者を中心に PCR 等検査を実施してきたため、感染者の全てが把握されている わけではない。しかし、検査件数が徐々に増加している中で、陽性件数は全国的に 減少傾向にあること、また、東京などで倍加時間が伸びていることなどから、新規 感染者数が減少の傾向にあることは間違いないと判断される。なお、さらに詳細な データについては近日中に開催する専門家会議において別途お示しする。」

傾向はつかめるというのは同意するが、実効再生産数の推定や、感染者数シミュレーションなどの定量的な解析を行うには、問題があることを認めていると受けとれる表現であり、状況分析の他の内容と矛盾を生じているように感じられる。ここは、専門家側も、現実と理論の間に挟まれて苦しいところであろう。

問題は、自粛による(半)定量的な効果があまり議論されていないことであろう。発症までの期間は個人差もあるので、確定的なことは言えないが、発症者の頭打ち、減少は、緊急事態宣言より前に始まっているようにも見える。

まとめると要点は以下のような感じであろうか。

・自粛による感染者数への効果の(半)定量的な議論が不足している

PCR検査数に依存する感染者数のデータに対する捉え方がわからない

・推定実効再生産数は信頼できるのか?

・抗体検査の捉え方がわからない

・正直、諸外国に比べて施策のスピード感は遅いように感じられる