殿堂入りのお皿たち

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コロナウイルスの見通し7 コロナウイルスの不活性化

※こちらの記載内容は可能な限り科学的に正しくなるように最善を尽くしていますが、100%正しいかどうかはわかりません。

※本記事は、個人で書いたものであり、間違いを含んでいる可能性があります。必ずしも、全てが正しいと は限らないことをご了承下さい。

 

コロナウイルスにかからないためには、コロナウイルスが体内に侵入しないようにすれば良い。そのためには、コロナウイルスがどのようなものかを知っていることは有益である。

始めに記しておくと、ウイルスは生物ではない。従って、ウイルスを殺菌する、のような書き方をしている商品があれば、その商品の開発者は、おそらく科学的知識がないと思って良い。ウイルスは生物ではないので、殺すことは出来ず、変性させ、不活性化することしか出来ない。ウイルスが殺せない、ということを知っているだけでも、偽商品、トンデモ商品を見抜くことが出来る。

 

コロナウイルスの除去には、簡単には、水により洗い落とすのが簡単である。しかし、ドアノブなど、水で洗うことが難しい箇所では、多くの場合、アルコールが用いられている。

コロナウイルスは、エンベロープウイルスと呼ばれるもので、エンベロープウイルスは、脂質二分子膜を有している。この脂質二分子膜がアルコールで膜破壊されるので、アルコールが有効だとされていると考えられる。エンベロープが壊れると、感染の際に作用するスパイクが、ウイルスの本体であるRNA(遺伝情報)とばらばらになり、RNAが人間などの生物に入り込めなくなる。

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エンベロープとは、下記の膜状になっているもので、二本鎖界面活性剤分子が、二層のベシクルと呼ばれる集合体を作っている部分のことである。この二本鎖界面活性剤分子というのは、水に混ざりやすい部分と、油に混ざりやすい部分の両方をもっており、両親媒性化合物と呼ばれる。

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Features of coronavirus E proteins. The cysteine-rich region of the MHV E protein (residues 38 to 52) is depicted in a helical wheel format. Hydrophobic residues of the helical wheel are identified with large encircled shading, and palmitates extending from cysteines 40, 44, and 47 are depicted with corrugated lines. Cysteines 40, 44, and 47 are denoted with asterisks in the primary sequence. Residues 38 to 52 are delineated in the context of the entire E amino acid sequence and compared with E sequences for groups 1 (TGEV) and 3 (IBV). The membrane-intercalating portions of each E protein are highlighted. A predicted membrane organization for the MHV E protein is illustrated at the bottom, in the context of a budding virion, with the outside of the virion at left and the inside at right. See the text for additional details.

DOI: 10.1128/JVI.01906-07

 

このような集合体の形成現象は、身近でも観察され、例えば、洗剤には界面活性剤という化合物が入っており、これが集合体の形成による泡立ちのもとである。アルコールは、消泡剤とも呼ばれ、これは界面活性剤の集合体(ミセル)を破壊するからである。ミセルと脂質二分子膜の集合原理は、疎水性相互作用(水分子のエントロピーが駆動力)であり、同じ原理に基づく。この集合体は基本的に水中でしか形成されない。すなわち、消泡剤となるものは、コロナウイルスの不活性化に有効である可能性が高い。

簡単に言えば、水とも油とも混じりやすい化合物、有機溶媒(油的なもの)が、脂質二分子膜を破壊する可能性が高い物質である。

このような、エンベロープを溶かすという方法以外では、強力な酸化剤(0.05%の次亜塩素酸ナトリウムや薄めた漂白剤)や、紫外線(太陽光の一部)で直接、ウイルスの構成分子を変性させてしまう方法がありうる。ただ、この方法の場合は、十分な濃度と量が必要であろう。

また、ウイルスの不活性化には、太陽光もかなり有効であろう。

 

なお、コロナウイルスの大きさは、100 nmオーダーなので、通常のマスクの遮蔽では防ぎきれない。通常のマスクの効果は、大きな飛沫を絡め取る、すなわち、自分から人に移す確率を下げるものと認識すべきであろう。